仕込みをムダにしない「キッチンカー管理術」定位置とラベリングが利益を守る

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前回の記事で、僕たちは「ポーション化」「ソース化」「下味冷凍」といった、営業中の作業を「ゼロ」にするための、プロの「仕込み技術」を学びました。 完璧な「仕込み品」が、冷蔵庫の中にズラリと並んでいます。 これで「秒速オペレーション」が実現できる…と、安心するのはまだ早いのです。

なぜなら、その「仕込み品」は、「管理」されて、初めて「武器」になるからです。 「管理」なき「仕込み」は、ただの「ロスの予備軍」を冷蔵庫に詰め込んだにすぎません。

この記事では、あなたの「仕込み(技術)」を、あなたの「利益(儲け)」に確実に変えるための、最後の1ピースである「管理術」について徹底解説します。

「管理」なきキッチンが招く「3つの悲劇」

もし、あなたが「仕込み品」を作っただけで、その「管理」を怠ったら、どうなるか? 営業中のピークタイムに、必ずこの「3つの悲劇」が、あなたを襲います。

悲劇1:時間のロス(=探すムダ)

お客さんの行列ができています。注文は「タコライス」です。 「よし、仕込んだ『ひき肉』と『チーズ』と『レタス』を…あれ?」 「『ひき肉』は、冷蔵庫のどこだっけ?」 「『チーズ』は、上の棚か? 下の引き出しか?」

この「探している時間」、1食あたり「10秒」としましょう。 この「10秒」は、1円の利益も生まない、完全な「ムダ」です。 1日に100食売るなら、10秒 × 100食 = 1,000秒 = 約17分

あなたは、毎日「17分間」、ただ「冷蔵庫を眺(なが)めて探しているだけ」の、恐ろしい「機会損失」を生み出します。 前の記事(第29回)で「歩行ゼロ」の動線を設計したのに、「探すムダ」で、すべてが台無しです。

悲劇2:ロスの発生(=捨てるムダ)

営業が終わり、冷蔵庫を掃除(そうじ)していると… 「あ、こんな奥(おく)から、3日前に仕込んだ『鶏肉(とりにく)』が出てきた…」 「もう色が悪い。これは、捨てるしかない…」

これが、キッチンカー経営で最も愚(おろ)かな「赤字」の発生源(はっせいげん)です。 「古いものから順番(じゅんばん)に使う」という「先入先出(さきいれさきだし)」の「仕組み」がなかったために、あなたは「仕込み」にかかった「材料費」と「あなたの時間(人件費)」の両方を、ゴミ箱に捨てたのです。

悲劇3:ミスの発生(=品質のブレ)

冷蔵庫に、ラベルの貼(は)られていない「同じ形のタッパー」が2つあります。 「あれ、こっちは『激辛(げきから)ソース』? それとも『ふつうのソース』?」 「まあ、たぶん、こっちだろう」

結果、あなたは「激辛」が苦手なお客さんに、間違ったソースを提供してしまいました。 お客さんは二度と来ません。 あなたの「ブランド(信頼)」は、「管理(ラベリング)」を怠ったせいで、一瞬(いっしゅん)にして崩壊(ほうかい)しました。

「探す」「捨てる」「間違える」。 この3つの悲劇は、すべて「管理術(仕組み)」で、100%防ぐことができます。

解決策1:「定位置管理」の設計(5Sと動線)

「管理」の第一歩は、「すべての『モノ』に、『住所』を決める」ことです。 これを「定位置管理」と呼びます。 「探すムダ」をゼロにする、最強の仕組みです。

「コックピット」の「ゴールデンゾーン」を設計せよ

動線デザインで学んだ「L字型コックピット」の設計思想を思い出してください。 「歩行ゼロ」「旋回半径」で作業を完結させるのがゴールでした。 この「定位置管理」は、そのコックピット設計の「最後の仕上げ」です。

あなたは、「使用頻度」に基づいて、すべての「仕込み品」の「住所」を、設計図の段階で決定しなければいけません。

  • 1軍(一等地):ゴールデンゾーン(目線~腰の高さ)
    • 作業台のすぐ下」の冷蔵庫や、「手を伸ばせば届く」棚。
    • 置くべきモノ:営業中に「最も触る」仕込み品。(例:唐揚げ屋の「鶏肉ポーション」、タコライスの「レタス」)
    • ここに「使用頻度の低い」モノを置くのは、都心の一等地に「物置」を建てるのと同じくらい、ムダな設計です。
  • 2軍(二等地):少し離れた場所
    • かがむ」必要がある「作業台の下の奥」や、「背伸び」が必要な「吊戸棚」。
    • 置くべきモノ:営業中に「たまにしか使わない」仕込み品。(例:トッピングの「チーズ」、予備の「ソースボトル」)
  • 3軍(三等地):ストックヤード
    • キッチンカーの外」(家の冷凍庫、車内の収納庫など)
    • 置くべきモノ:「営業中は、絶対に使わない」モノ。(例:明日の分の「冷凍在庫」、予備の「割り箸」)

「探す」という行為は、「モノに『住所』がない」から発生します。 すべてのモノに「住所」を与え、「使ったら、かならず住所に戻す」というルールを徹底する。これが、秒速オペレーションの土台となる「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」の基本です。

解決策2:「ラベリング」と「先入先出(FIFO)」の仕組み化

「定位置管理」で「場所」が決まったら、次は「モノ」そのものの「管理」です。 「ロスの発生(悲劇2)」と「ミスの発生(悲劇3)」は、この「仕組み」で防ぎます。

「感覚」で管理するな、「仕組み」で管理せよ

「たぶん、これが古いはず」 「この匂いは、激辛ソースだ」 こんな「感覚」に頼った管理は、必ず「ミス」を呼びます。 プロは、「誰が見ても、1秒で『分かる』」仕組みを作ります。

【技術1:ラベリング(見える化)】 すべての「仕込み品」には、必ず「ラベル」を貼ります。 安い「マスキングテープ」と「油性マジック」で十分です。 しかし、書くべき「情報」には、鉄のルールがあります。

  • ルール1:『品名(ひんめい)』(例:「激辛ソース」「鶏もも(下味済)」)
  • ルール2:『仕込み日(しこみび)』(例:「11/10 朝」)

たったこれだけです。 「これは何か?」「いつ作ったか?」 この2つの情報が「見える化」されるだけで、「ミスの発生(悲劇3)」は、100%防げます。

【技術2:先入先出(FIFO)の仕組み化】 「ラベリング」で「いつ作ったか」が分かりました。 次は、「ロスの発生(悲劇2)」を防ぐ、「先入先出(さきいれさきだし)」(First-In, First-Out)の徹底です。 「古いものから、先に使う」という、あのシンプルなルールです。

しかし、「気をつける」だけでは、人間は忙(いそが)しいと必ずミスをします。 だから、プロは「物理的な仕組み」で、ミスを防ぎます。

  • 仕組みの例:「右から(手前から)取って、左から(奥から)入れる」
    • 冷蔵庫の「定位置」に、ルールを貼ります。「仕込み品は、右から使え!」
    • 新しい「仕込み品」を作ったら、「必ず、左(奥)」に置く。
    • こうすれば、作業者は「何も考えなくても」、自動的に「一番右(=一番古い)」の仕込み品から手を伸ばすことになります。

「気をつける」のではなく、「そうするしかない『流れ』を、設計する」。 これが、プロの「管理術」です。

4. 解決策3:「発注」と「仕込みリスト」の連動

「管理術」の最後にして、最も「経営」に近いのが、「発注」の管理です。 なぜなら、すべての「ロス」は、あなたが「食材を仕入れた(発注した)瞬間」から、始まっているからです。

「感覚」で発注していませんか? 「今週は、鶏肉10kgくらいかな?」 この「なんとなく」の発注が、あなたの冷蔵庫を「ムダな在庫(=ロス予備軍)」でパンパンにし、経営を圧迫します。

「仕込み」を「発注」の「コンパス」にせよ

プロは、「発注」と「仕込み」と「在庫管理」を、「1枚の紙(またはアプリ)」で連動させます。

【儲かる店の「管理シート」の仕組み】

  1. 営業終了後:「定位置」にある「仕込み品」の「残り(残量)」を、すべてチェックシートに書き出す。
    • (例:「唐揚げポーション:残り3個」「レタスポーション:残り0個」)
  2. シート(仕組み):そのシートには、「明日の営業に必要な『標準在庫数』」が、あらかじめ書かれている。
    • (例:「唐揚げポーション:標準在庫は20個」「レタスポーション:標準在庫は20個」)
  3. 自動的に「仕込む量」が決まる
    • (唐揚げ:標準20 – 残り3 = 明日の仕込みは「17個」)
    • (レタス:標準20 – 残り0 = 明日の仕込みは「20個」)
  4. 自動的に「発注する量」が決まる
    • 「17個」の唐揚げを作るために必要な「鶏肉」の量(例:2.0kg)が、自動的に「発注リスト」に載る。

もう、あなたは「明日は何を、どれだけ仕込めばいいか?」「何を、どれだけ発注すればいいか?」と、「悩む」必要が一切ありません。 ただ「シート(仕組み)」に「残量」を書き込む「作業」をするだけです。

「感覚」を「仕組み」に落とし込む。 これが、あなたの「時間」を生み出し、「ムダな在庫(ロス)」をゼロにし、「利益」を安定させる、「管理術」のゴールです。

まとめ:「仕込み」とは、「技術」と「管理」の両輪である

「仕込み」とは、単に「ポーション化(技術)」するだけでは、半分以下の「未完成品」です。

  1. 「技術(第31回)」:ポーション化・ソース化し、営業中の「作業」をゼロにする。
  2. 「管理(今回)」:その「仕込み品」を、「定位置」「ラベリング」「先入先出」「発注連動」という「仕組み」で動かす。

この「技術」と「管理」という「両輪」がそろって初めて、あなたの「仕込み戦略」は完成します。 そして、この「管理」という「地味な仕組み」こそが、あなたの「秒速オペレーション」を支え、「利益」を安定して生み出し続ける「最後の1ピース」なのです。

その「仕込み品」、毎日「探す・捨てる・間違える」ムダを発生させていませんか?

「『探すムダ』で、毎日17分も損していたのか…」 「『先入先出』を、仕組み化できていなかった」 「『発注』を『感覚』でやっていたから、ロスが減らなかったんだ」

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