これまでの記事で、儲け（利益）の大切さや、赤字と黒字の境目である損益分岐点という魔法の数字についてお話ししました。
「でも、その『損益分岐点』って、どうやって計算するの？」
お待たせしました。 今回は、いよいよその計算方法を、だれでもできるように3つのステップに分けて、具体的に解説します。 これさえ分かれば、あなたのお店のゼロのラインがハッキリと見えてきます。
損益分岐点を計算する3つの公式
計算といっても、難しいことはありません。 使うのは「たし算・ひき算・わり算」だけ。 この3つの公式を、順番にやるだけです。
- 【売上】－【変動費】＝【限界利益（げんかいりえき）】
- 【限界利益】÷【売上】＝【限界利益率】
- 【固定費】÷【限界利益率】＝【損益分岐点】
「限界利益ってなに？」
大丈夫です。 資料にある唐揚げ屋の例 を使いながら、一つひとつゆっくり見ていきましょう。
【実践】唐揚げ屋さんの「損益分岐点」を計算してみよう
ここに、唐揚げ屋の1ヶ月の数字があります。 このお店のゼロのラインは、いったいいくらなのでしょうか？
ステップ0：3つの数字を集める
まず、計算をはじめる前に、この3つの数字を集めます。
（※これは、あなたが前の記事で「固定費」と「変動費」に仕分けした数字です）
- 売上：100万円
- 変動費（材料や容器など）：35万円
- 固定費（家賃やローンなど）：40万円 (※資料の計算例より)
準備はOKです。 この3つの数字を、さっきの公式に入れていきましょう。
ステップ1：「限界利益」を出す
まず、ステップ1の公式です。
【売上】－【変動費】＝【限界利益】
100万円（売上） － 35万円（変動費） ＝ 65万円（限界利益）
出ました。限界利益は65万円です。
限界利益とは、むずかしい言葉ですが、簡単に言えば「商品を売ることで、あなたが稼いだ『本当の力』」のことです。
（まだ固定費には、1円もはらっていません。その前に、まず商品力だけで65万円を稼いだよ、という意味です）
ステップ2：「限界利益率」を出す
次に、ステップ2の公式です。 さっき出した限界利益を使います。
【限界利益】÷【売上】＝【限界利益率】
65万円（限界利益） ÷ 100万円（売上） ＝ 0.65（限界利益率）
限界利益率は0.65、つまり65%です。
限界利益率とは、「あなたのお店の『儲けパワー』」のことです。
65%は、
「もし、あなたが100円の唐揚げを売ったら65円が儲けになる（固定費をはらう前の）」
「もし、1,000円売ったら650円が儲けになる」 という意味です。
この「儲けパワー（限界利益率）」が、高ければ高いほど、あなたは儲かりやすい、強いお店だということです。
ステップ3：「損益分岐点」を出す（ゴール！）
いよいよ、最後のステップ3です。 固定費と、さっき出した限界利益率を使います。
【固定費】÷【限界利益率】＝【損益分岐点】
40万円（固定費） ÷ 0.65（限界利益率） ＝ 615,385円（損益分岐点）
615,385円！ これこそが、この唐揚げ屋の損益分岐点。
つまり、赤字と黒字をわける、プラスマイナス・ゼロのラインです！
615,385円がわかると、何が変わる？
この615,385円という魔法の数字が、あなたに教えてくれることは何でしょうか？
- この唐揚げ屋は、1ヶ月に615,385円を売り上げたら、やっとプラスマイナス・ゼロです。
- もし、売上が615,384円だったら、まだ1円の赤字です。
- もし、売上が615,386円だったら、やっと1の黒字（儲け）が出たことになります。
どうでしょう？
「今月、売上50万円だった…赤字だ…」
「今月、売上80万円だった！ やったー！ 80万 – 61万5千円 ＝ 約18万5千円も儲かったぞ！」
と、自分が勝っているか、負けているかが、ハッキリと分かるようになります。
これが、損益分岐点という最強のコンパスの力です。
まとめ：あなたのゼロのラインを計算しよう
今回は、唐揚げ屋を例にして、損益分岐点を計算する3つのステップを解説しました。
- 限界利益 ＝ 売上 － 変動費
- 限界利益率 ＝ 限界利益 ÷ 売上
- 損益分岐点 ＝ 固定費 ÷ 限界利益率
この3ステップをふむだけで、今月、いくら売れば赤字にならないか、という、あなたのゴールラインがハッキリと見えます。
次の記事では、この損益分岐点が、あなたの儲けパワー（限界利益率）によって、どれだけ怖い動きをするかをお話しします。
あなたのゼロのライン、計算できましたか？
「計算のステップは、わかった！」
「でも、ウチのお店の固定費と変動費の仕分けが、やっぱり不安…」
「この計算、誰かに合ってるか見てほしい！」
そうですよね。 この計算は、ステップ0にある固定費と変動費の仕分けを1円でもまちがえると、全部の数字がズレてしまいます。
あなたの本当のゼロのラインは、本当にその数字で合っていますか？
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