「キッチンカーを開業したい。でも、新車は高い…」 「ちょうどいい『中古キッチンカー』が、新車の半額で出ている！お得だ！」
開業を急ぐオーナーにとって、「中古キッチンカー」は、初期費用を抑えられる「賢い選択」のように見えます。 しかし、その判断こそが、あなたの事業を「開始と同時に『赤字』に叩き込む」ことになる「最大の罠」だとしたら？
「中古キッチンカー」とは、実店舗でいう「居抜き物件」です。
ここで、冷静に考えてみてください。 実店舗の「居抜き」とは、多くの場合、「前の店が『儲からなくて』潰れた」か「撤退した」場所です。 あなたは、その「潰れた店」の内装や設備を、何の疑いもなく「そのまま」使って、自分の店が「儲かる」と本気で信じますか？
…いるはずがありません。 なぜか「キッチンカー」になった途端、多くの人が「中古＝お得」と錯覚し、この「経営の鉄則」を忘れてしまうのです。
この記事では、「建築士」であり「飲食店設計」のプロが、なぜ「中古（居抜き）キッチンカー」が「危険な投資」なのか。 その「安い価格」に隠された「3つの時限爆弾」と、中古車を「資産」に変える「唯一の戦略」を解説します。
爆弾1：【設計の罠】あなたの「メニュー」と「100%合わない」
これが、中古車が「儲からない」最大の理由です。 その車は、「前のオーナー」の「特定のメニュー」と「特定のオペレーション」のために「最適化」されています。
- （例）「クレープ屋」の中古車
- 「1名オペレーション」で「トッピング冷蔵庫」と「クレープ台」だけが置ける「コンパクトな動線」で設計されています。
- あなたが、その車で「唐揚げ屋」を始めたら？
- 「大型フライヤー」を置くスペースがない。
- 「2名オペレーション」に対応できる窓の動線（会計と提供の分離）がない。
- 「火力」に必要な「発電機容量」が足りない。
結果、あなたのオペレーションは「非効率の極み」となり、ピークタイムの行列をさばけず、「機会損失（赤字）」を垂れ流します。 「安い」という理由で、「自分の事業戦略と『真逆』の設計」の「鎧」を着て、戦場に出るようなものです。
爆弾2：【負債の罠】「前の店が潰れた理由」を、そのまま引き継ぐ
なぜ、前のオーナーは、その車を手放したのでしょうか？ 「儲かって仕方ない」車を、わざわざ「安く」手放す経営者はいません。
答えは「儲からなかった」からです。 そして、その「儲からなかった理由」が、まさに「その車そのもの」にある可能性が非常に高いのです。
- 「掃除に1時間かかる『ベニヤ板』の内装で、人件費が赤字だった」
- 「家庭用冷蔵庫を使っており、夏場に食材をすべて廃棄した」
- 「軽トラベースで積載量が足りず、売上の天井が低すぎた」
あなたは、「安く買った」つもりで、前のオーナーが「儲からなかった」原因である「赤字設計（負債）」そのものを、喜んで「引き継いでいる」のです。
爆弾3：【劣化の罠】「見えない腐食」が「営業停止」を招く
これが、物理的に最も恐ろしい「時限爆弾」です。 キッチンカーは、「水」「油」「熱」「振動」に毎日さらされる「過酷な環境」です。
中古車は、その「ダメージ」を「内側」に溜め込んでいます。
- 内装の裏側（見えない場所）： 前のオーナーの「ずさんな防水処理」により、侵入した「水」や「蒸気」が「カビ」を繁殖させ、「車体のフレーム（骨格）」を「サビ」させている。
- 設備機器（中古）： 冷蔵庫、フライヤー、発電機…。「あと半年」で「寿命」が来て、ピークタイムの「ど真ん中」で「沈黙」するかもしれない。
あなたは「初期費用」を100万円安く買った結果、 開業3ヶ月で「発電機が故障（修理費20万円）」「冷蔵庫が停止（修理費15万円）」「雨漏りで内装が腐食（修理費30万円）」。 さらに「修理のための営業停止（機会損失30万円）」…
「安物買いの銭失い」とは、まさにこのことです。
メリットは「安い」だけ。しかし、それは「スタートライン」の話
もちろん、中古車のメリットが「ゼロ」とは言いません。
- 初期費用（イニシャルコスト）が安い。
- 保健所の許可構造が（一応）すでに出来上がっている。
- 開業までのスピードが早い。
これらは事実です。 しかし、これらは全て「スタートラインに立つまで」の話。 「スタートした後（＝経営）」に、前述の「3つの爆弾」が「確実」にあなたを襲い、結局「新車以上のコスト」を支払うことになるのです。
結論：「中古（箱）」は買え。ただし「そのまま使うな」
では、どうすればいいのか？ 「中古車は絶対に買うな」とは言いません。最も「賢い」戦略は、以下の通りです。
「中古の『箱（ベース車両）』」を安く買い、 「内装」と「設備」は、自分の「事業計画」に合わせて「すべて作り替える（リメイク・リノベーション）」
これです。 実店舗の「居抜き」でも、儲かるオーナーは「スケルトン（内装全解体）」に戻してから、自分の店を「設計」し直します。キッチンカーも全く同じです。
あなたの「メニュー」に最適な「厨房レイアウト」と「動線」。 あなたの「利益」を守る「プロ品質の内装（ステンレス）」。 あなたの「事業」を止めない「新品の業務用機器」。
これらに「投資」してこそ、中古車は初めて「お得な買い物」＝「利益を生む資産」に変わるのです。
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