「キッチンカーを開業しよう！」
そう決意したあなたが、次に考えることは何ですか？ 「まず、保健所に許可の相談に行かないと」 「どんな車にするか、中古車サイトを見よう」 「製作会社に見積もりをもらおう」
もし、あなたがこれらを「最初のステップ」だと考えているなら、非常に危険です。 あなたは、「儲からない」オーナーが全員ハマる「致命的な罠」に、自ら足を踏み入れようとしています。
実店舗の「レストラン」を開業する場合を想像してください。 「何料理の店（フレンチ？ ラーメン？）」を「どの街（オフィス街？ 住宅地？）」で「誰に（サラリーマン？ 家族連れ？）」売るか。 この「マーケティングリサーチ」を「一切やらずに」、いきなり「店舗の契約」や「厨房機器の選定」を始める経営者が、いるでしょうか？ …いるはずがありません。そんな店は、100%潰れます。
しかし、なぜか。 「キッチンカー」になった途端、ほぼ全員が、この「実店舗では当たり前のリサーチ」を「完全に省略」してしまうのです。
「車」という「箱」さえ手に入れれば、なんとかなる。 「許可」さえ取れれば、どこでも売れる。 これは、完全な幻想です。出店場所確保なんて激戦なのにです。
この記事では、「建築士」であり「飲食店設計」のプロが、なぜ「保健所」や「車両製作」が「最初のステップ」ではないのか。 あなたの「売上」と「利益」の「すべて」を決定づける、「本当の最初のステップ」を解説します。
「箱」から考えるな、「事業」から考えよう
多くの人が「車（モノ）」から考えてしまいますが、キッチンカーは「車」ではありません。「移動する店舗（事業）」です。
「儲からない」オーナーは、「箱（車）」を先に決めます。 「（なんとなく）軽トラでいいや」 「（なんとなく）おしゃれな見た目にしよう」 そして、その「制約だらけの箱」に合わせて、後から「売るモノ」や「売る場所」を考え始めます。
一方、「儲かる」オーナーは、事業を先に決めます。 「何を・どこで・誰に・いくらで」売るか。 その事業計画（＝リサーチの結果）」を「実現」するために、どんな箱（車）が必要かを「逆算」して設計します。
この「順番の違い」が、スタート地点で「利益の分かれ道」を決定づけているのです。
「保健所」より「現場」へ。あなたが「今すぐ」やるべきリサーチ
「保健所の許可」は、「あなたの『事業計画』が決まった後」に、その計画を実現するために「必要な手続き」でしかありません。 順番が逆です。まともにキッチンカーを製作すれば必ず取れます。取れないのはまともではないからです。
あなたが「保健所」や「製作会社」に行く「前」に、絶対にやるべき「リサーチ」は、以下の3つです。
①「何を」売るか？（メニュー戦略）
あなたの「武器」は何か？ 「本格的な味」ですか？ それは「提供に5分」かかりませんか？ もしそうなら、「ランチタイム（1時間の短期決戦）」では「機会損失」を生み、あなたは「儲からない」でしょう。（→ 関連記事儲かるメニューは「ダウングレード」）
②「どこで」売るか？（出店場所戦略）
あなたの「戦場」はどこか？ 「オフィス街のランチ」ですか？ それとも「土日のイベント」ですか？
もし「オフィス街」なら、ライバルは何時で、平均単価はいくらで、1時間に何人さばいていますか？ もし「イベント」なら、客層は「家族連れ」ですか？「若者」ですか？
この「現場リサーチ」をせずして、売上予測など立てられるはずがありません。
③「いくら」儲かるか？（売上・利益予測）
「何を」「どこで」売るかが決まれば、初めて「現実的な売上」が見えます。
（例：オフィス街ランチ）
- ライバル分析から、1時間のピークでさばけるのは「最大60人」
- 客単価「800円」
- → 1日の売上目標（最大）：48,000円
この「48,000円」という「売上の天井」が、あなたの「投資（車両製作費）」に見合っているか？ 「1t車」が必要なメニューなのに、売上予測が「軽トラ」レベルになっていませんか？（→ 関連記事：「1t車」が儲け幅が広い理由）
「リサーチ」が、あなたの「キッチンカー」を「設計」する
この「リサーチ（事業計画）」が完了して、初めて「車の設計」が始まります。 「リサーチ」の結果が、「必要な車の仕様」を「すべて教えてくれる」からです。
- （例A）リサーチ結果：「オフィス街」で「1時間60人」に「700円の弁当」を売る
- → 必要な設計：「スピード」が命。調理済み弁当を「保温」し、「会計」と「提供」を「分離」できる「2名オペレーション用の広い窓」が必須。（→ 関連記事：売上を伸ばす窓の設計術）
- （例B）リサーチ結果：「土日イベント」で「家族連れ」に「500円のクレープ」を売る
- → 必要な設計：「スピード」より「作業効率」。トッピング用の「大容量冷蔵庫」と「1名で完結できるコンパクトな動線」が必須。（→ 関連記事：機器選定の罠）
「A（弁当屋）」の設計で「クレープ」は焼けません。 「B（クレープ屋）」の設計で「ランチの行列」はさばけません。
「リサーチ」を飛ばして「なんとなく」で作った車は、「どちらの戦場でも戦えない、中途半端な車」になり、「儲からない」のです。
まとめ：「設計図」のない「キッチンカー」は製作しない
「保健所の許可」や「車両の製作」から考えるのは、「設計図（事業計画）」がないまま「家（キッチンカー）」を建てようとするのと同じです。 そんな「家」が、快適（＝儲かる）であるはずがありません。
「キッチンカーは儲からない」のではありません。 「儲かるためのリサーチ（設計図）を、誰も描いていない」だけなのです。
「保健所」に行くのは、その後でいい。 「製作会社」に電話するのは、その後でいい。 あなたが「今、最初の一歩」でやるべきことは、「現場」に行き、競合を「観察」し、お客様を「分析」することです。
それが、あなたの「利益」を生む「設計図」を描く、唯一の方法なのです。
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