キッチンカー事業で出たゴミを家庭ゴミで出すと不法投棄になる
キッチンカーの営業が無事終了。 売上を計算し、安堵のため息をつくあなた。しかし、車の後ろには大量のゴミ袋が残されています。例えば、食材の切れ端、油の入った一斗缶、お客様が残した食べ残しといったものが該当します。
あなたは、そのゴミ袋を車に積み込み、自宅のマンションに持ち帰ります。 そして、自宅の家庭ゴミ収集場所に、こっそりと捨てました。
「仕込みも家でやったし、自分が出したゴミだから、家庭ゴミでいいだろう」
「ゴミ処理にお金を払うなんて、バカバカしい」
もし、あなたがこれをやっている、または、やろうとしているなら、今すぐ止めてください。 その行為は、あなたのキッチンカー事業そのものを終わらせる可能性がある、明確な違法行為。つまり、不法投棄になります。
この記事では、建築士であり飲食店設計のプロが、なぜそれが違法なのか、そして事業者として利益を守るためにどうすべきか、ゴミ処理という経営コストについて徹底的に解説します。
キッチンカー営業で出たゴミは、事業ゴミとして処理する義務がある

「なぜ、自宅のゴミ捨て場に出してはいけないのか?」
それは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)で、厳格に定められているからです。
あなたのゴミは事業ゴミである
法律では、キッチンカーの営業、仕込み、販売などの事業活動によって生じた廃棄物は、すべて事業系廃棄物(=事業ゴミ)と定義されます。 家庭から出る家庭ゴミとは、法的に全くの別物です。
家庭ゴミは、市区町村が税金を使って収集・処理しています。 しかし、事業ゴミは、事業者が、自らの責任とコストで処理することが義務付けられています。
家庭ゴミに出す=不法投棄
事業ゴミを、自治体の家庭ゴミ収集場所に出す行為。 それは、処理コストを自治体(=住民の税金)に不正に負担させる行為であり、不法投棄という犯罪にあたります。
バレなければいい、と考えるのは、最悪の経営判断です。 あなたのキッチンカーという目立つ車が、毎日大量のゴミを家庭ゴミ収集場所に捨てていたら、どうなるでしょう?
近隣住民は必ず見ています。
「あの車、いつも大量にゴミを捨てている。おかしい」
↓
市区町村に通報
↓
指導、改善命令
↓
従わなければ罰金または営業許可の取り消し
あなたの信用とブランドはゼロになり、数百円のゴミ処理代をケチったことで、数百万円の事業を失うのです。
キッチンカー運営ででた事業ゴミの正しい処理方法3選
では、事業者として、どう処理するのが正解なのか? 主に3つの方法があります。これは必ずかかる経費として、あなたの事業計画に組み込まなければなりません。
方法1:出店場所のゴミ処理ルールに従う
最もクリーンで簡単な方法です。 イベント、商業施設、オフィス街のランチスペースなど、管理者がいる場所では、出店契約の中にゴミ処理に関するルールが必ず定められています。
- パターンA(費用込み):出店料にゴミ処理費用が含まれており、指定の場所に捨てるだけ。
- パターンB(費用別途):出店料とは別に、ゴミ袋1つ〇〇円などで処理費用を支払う。
- パターンC(持ち帰り):ゴミはすべて持ち帰ること、と契約で定められている。(この場合、↓の方法2か3が必要)
出店契約の際に、ゴミ処理のルールと費用を必ず確認すること。これがプロの最低条件です。
方法2:自ら廃棄物処理業者と契約する
持ち帰りが原則の場所で営業する場合や、仕込み場所で大量のゴミが出る場合は、あなた自身が廃棄物処理業者と契約する必要があります。
- 市区町村から一般廃棄物収集運搬業の許可を得ている業者を探し、見積もりを取ります。
- 月額固定や従量課金など、料金体系は様々です。
- これが経営コストです。ガソリン代や食材費と同じ必要経費として計上してください。
方法3:仕込み場所(実店舗など)の事業ゴミとして処理する
すでに実店舗の飲食店を経営しており、その仕込み場所としてキッチンカーを運営している場合。 その実店舗がすでに契約している事業ゴミのルートで、一緒に処理します。
※注意:仕込み場所が自宅のキッチンの場合、そこで出たゴミも事業ゴミとなるため、本来は家庭ゴミとは分けて処理業者に委託するのが正しい運用です
キッチンカー運営ではゴミ処理コストを無視するから儲からない
キッチンカーは儲からない、というオーナーの多くは、このゴミ処理コストのような見えにくい経費を事業計画から完全に無視しています。
「1日の売上が5万円、原価が2万円。よし、3万円の儲けだ!」 …本当にそうでしょうか?
その儲けから、 ガソリン代、出店料、発電機の燃料代、そしてゴミ処理代(数百円〜数千円) を、引いていますか?
ゴミ処理コストを無視し、不法投棄で節約したつもりになっている経営は、いつか必ず破綻します。 コストから目をそらさず、コストを含めた上で利益が出るように価格設定やメニュー戦略を設計すること。 それこそが、本物の経営です。
まとめ:キッチンカー開業したらゴミ処理は信用を守る経営である
ゴミ処理は、面倒な作業ではありません。 あなたの事業と信用を法律の面から守る、重要な経営活動そのものです。
家庭ゴミで捨てるという違法な近道は、あなたの信用を一瞬で失墜させ、営業停止という最悪のリスクを招きます。
ゴミ処理コストを正しく事業計画に組み込み、クリーンに運営すること。 それこそが、地域住民から応援され、長く愛されるキッチンカーであり、儲かるキッチンカーへの唯一の道なのです。
ゴミ処理コストまで考えて事業計画を立てていなかった
「保健のことは気にしてたけど、廃棄物処理法は知らなかった」
「出店契約書で、ゴミ処理について、具体的に何を確認すべきか教えてほしい」
そう、キッチンカー経営は、儲けだけでなく、法律やコストといった守りの部分が非常に重要です。 その見落としがちな穴、プロと一緒に塞ぎませんか?
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